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PX4によるラジコン飛行機の自動操縦(1) 開発背景とシステム構成

PX4によるラジコン飛行機の自動操縦(1) 開発背景とシステム構成

K-ki
今回は、Dronecode内の飛行制御開発プロジェクトであるPX4を使用してラジコン飛行機の自動操縦システム構築に挑戦されており、1/3三田式3型改1製作記でその模様を紹介しておられる河上 宣道さんに開発の模様を寄稿していただきました。当サイトではまだまだ扱いの小さい固定翼機の情報であり、とても参考になるのでぜひ読んでみてください。

はじめに:ラジコン飛行機の自動操縦に挑戦

昨年秋からラジコン飛行機の自動操縦に取り組み始めました。諸外国ではそれなりに行われているようですが、わが国ではやられている方が少ないのか、情報も殆どありません。ネットでドローン関連の情報を集めはじめましたが、この方面の知識・経験がゼロの私ですので、使われる術語もチンプンカンプンで、時に途中で投げ出したくなる状況でした。そんな折にこのサイトに出会い、関連情報を判りやすく広範に解説していることを知り多いに勇気づけられました。

そんな私ですが、なんとかラジコン飛行機を離陸から着陸まで自動で飛行させるまでになりました。その状況をご披露するとともに、将来の更なる望みを述べたいと思います。

私とラジコン飛行機

子供のころから模型工作が好きで中でも模型飛行機に憧れた私ですが、当時はラジコン飛行機の黎明期で高価故子供の私には手が出ませんでした。代わりにワイヤーで釣ったUコン機を製作して校庭で飛ばしていました。

現役時代は仕事に追われて趣味は一切行うことが出来ませんでしたが、10年程前の退職を機に子供時代の夢であったラジコン飛行機の趣味を開始しました。当初は市販の半完成機を組み立てて飛ばしていましたが飽き足らず、やがて自分でゼロから作るようになりました。ラジコン飛行機にもスタント機、スピード機、スケール機、グライダー等色々な種類がありますが、私は古典的な複葉のスケール機や羽布貼りのビンテージグライダーが気に入っています。

複葉スケール機 Curtiss Jenny

図1は私が数年前に製作した複葉スケール機です。原型は第一次大戦直後にアメリカで大量生産され飛行訓練や郵便配達、更には曲芸飛行で名を馳せたCurtiss Jennyです。アメリカからキットを取り寄せて製作しました。キットと言っても図面と素材が入っているだけで、その素材から鋸とカッターで切り出して部品を作り組み上げるものです。主翼にはワイヤー張線が多数張り巡らされ、表皮は布で構造に縫い付けられた様子を再現しています。当時の雰囲気を再現でき、自慢の一機になっています。

キットから製作した複葉スケール機 Curtiss Jenn
図1 キットから製作した複葉スケール機 Curtiss Jenny

完全自作 1/3スケール三田式3型改1グライダー

図2は私の最新作で、おととしの末から調査を始めゼロから設計製作した、ビンテージグライダー三田式3型改1の1/3スケール模型です。翼幅5.3m、重量10kgの大型機です。実機は1960年代に日本で設計されたグライダーで、大学等の飛行クラブで多用され多くのパイロットを育てた機体です。計器盤や操縦桿、座席などの細部にも拘って忠実に実機を再現しています。実機の胴体は鋼管羽布貼りですが、それをカーボンパイプと布目調のフィルムで再現しました。昨年9月に初飛行しましたが、実機さながらの優雅な飛行で大変気に入っています。

完全自作の1/3スケール三田式3型改1グライダー
図2 完全自作の1/3スケール三田式3型改1グライダー

ラジコン飛行機の自動飛行にチャレンジすることに

1/3スケールグライダーの初飛行を終えて次に何をしようかと考えた時に、古典機の製作ばかりではいかにも懐古趣味で時代に取り残されると思い、最新技術に挑戦することにして自動飛行をテーマにしました。

現在、趣味の航空機分野での自動飛行の大半はマルチコプターです。それはそれで用途が広く価値のある分野ですが、形態に優美さが乏しく私の興味の対象から外れます。私は固定翼飛行機(以後単に飛行機と言います)の優美な姿が気にいっています。いつの日か上に示した機体を自動操縦で飛ばしてみたいと思い、飛行機の自動操縦にチャレンジすることにした訳です。

ラジコン飛行機向け自動操縦システムの動向調査

早速ネット上で飛行機の自動操縦に必要なシステムの調査を開始しました。このサイトを始めとして内外の情報を集めていくうちに、制御用ハードウェアはPixhawkが最もポピュラーであると判りました。これはフライトコントロールコンピュータと加速度、角速度、磁方位、気圧高度等のセンサーを一体にしたもので、FMU(Flight Management Unit)と言うことも知りました。

又、FMUにはSDカードがあってそれに飛行中の高度、速度、機体の傾き等各種データが記録され、飛行後にダウンロードして飛行記録(フライト・ログ)の解析ができることが判り、非常に興味をそそられました。これを活用すれば従来のラジコン飛行機とは一線を画す科学的な飛行分析ができると思ったからです。

フライトコードはPX4とAPMの2つが主流

更に調査を進めるとFMUにインストールするファームウェア(フライトコード)は、PX4とAPMが2大ソフトだと判明しました。また、これらをインストールすると共にFMUのセンサー較正等を行うにはPCにGCS(Ground Control Station)というソフトをインストールする必要があり、そのGCSはQGroundControl(QGC)とMission Planner(MP)の2つのソフトが主流であると言うことも知りました。

採用したシステム構成

Pixhawkには各種の派生版があります。私が購入したのは小型版であるPixfalconです。これにGPS/磁気センサーとパワーモジュールを加えたセットがHobby Kingで販売されていたので、それにピトー管式対気速度センサーを追加して購入しました。その後テレメトリー装置があると便利なので、日本の電波法でも使えるXbeeも追加しました。これらを手持ちの小型実験機(図3)に搭載しました。主要構成品は図4に示すようにコクピットに載せています。

実験に用いた小型機
図3 実験に用いた小型機
小型機のコクピットに搭載した主要機器
図4 小型機のコクピットに搭載した主要機器

ピトー管はプロペラ後流の影響を避けるために右主翼中央付近に取り付けました(図5)。これは当初、できるだけ簡単なシステムで実験するために外していましたが、途中から取り付けたものです。

ピトー管取り付け状況
図5 ピトー管取り付け状況

採用したフライトコードはPX4、GCSはQGCです。PX4とAPM、QGCとMPの性格の違いや優劣を調べましたが、私にはその判断をする知識もないと知り取り敢えず選択したものです。尚、ラジコン送信機はFUTABA 10J、受信機は同じくFUTABA R3008SB 8チャンネル受信機で、PixfalconとはS-Busで接続しています。

次回:飛行試験での飛行モード検証

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今回は河上 宣道さんに、PX4、Pixfalcon、QGroundControlを使用したラジコン飛行機の自動操縦システム構築についてご紹介いただきました。次回は、今回構築したシステムをベースに実際にフライトを行い、PX4が提供する飛行モードについて検証した結果についてご紹介頂く予定です。お楽しみに!

PX4によるラジコン飛行機の自動操縦(2)飛行試験と開発の今後
PX4によるラジコン飛行機の自動操縦(2)飛行試験と開発の今後

Dronecodeの飛行制御開発プロジェクトであるPX4を使用し、ラジコン飛行機の自動操縦システム構築に挑戦されている河上 宣道さんに開発の模様を寄稿していただきます。後編の今回は飛行試験でPX4の飛行モードを検証した結果を紹介します。

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河上 宣道

退職後ラジコン飛行機を趣味として始めました。中でも古典機やグライダーが性に合っています。いろいろ作っていますが、だんだん大きなものになっています。昨年スパン5.3mにもなる1/3三田式3型改1を完成させました。その後、最新技術に挑戦しようと、ラジコン飛行機の自動操縦に取り組み始めました。

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