ドローンやラジコン飛行機の操縦には、ラジコン用送信機(プロポ)を使います。このプロポに関してドローン初心者が最初に抱く悩みの一つが、「モード1のプロポを使うべきかモード2のプロポを使うべきか」というものです。
プロポの操作モード選びには、個人の感覚も影響するため一概には言えないのかもしれませんが、このサイトを運営するK-ki(K-ki@Ailerocket)は基本的にはモード2のプロポを使ったほうが良いと考えています。
このページでは、プロポの「モード1」「モード2」というものがそもそも何なのかという点の説明に始まり、各モードの特徴と、モード2を推奨する理由を解説していきます。
航空機の基本的な操縦方法
プロポの操作モードの説明に入る前に、まずは航空機の操縦がどのように行われるかを知っておく必要があります。ドローンも所詮は航空機の一種であり、基本的な考え方は同じです。
固定翼航空機の操縦
飛行機(固定翼航空機)の操縦では、3舵と呼ばれる舵面とスロットルを調整することによって機体を操るのが基本です。3舵とは、ロール軸まわりの回転角を操作する「エルロン(補助翼)」、ピッチ軸まわりの回転角を操作する「エレベーター(昇降舵)」、ヨー軸まわりの回転角を操作する「ラダー(方向舵)」のことです。
回転翼航空機の操縦
ヘリコプターやマルチコプターなどの回転翼航空機では、舵面が存在せず、代わりに回転翼(ローター)のピッチ角や回転数を変化させます。それにより、揚力の前後左右でのアンバランスや、ヨー軸まわりのトルクのアンバランスを作り出し、飛行機で3舵を操作した時と同様の機体挙動を生み出します。
ただし、固定翼のスロットル調整が前進方向の推進力を変化させるのに対し、回転翼のスロットル調整は上昇方向の力を変化させる点には注意が必要です。
プロポの操作モードとは
ここまで、「モード1」「モード2」などという表現をしてきましたが、これらはプロポの操作モードを表しています。プロポは操作モードによって、スティックを動かした時の機体挙動が変わってきます。
ドローンやラジコン飛行機の操縦に使うプロポでは、スティックの操作を上記の3舵およびスロットルレバーの操作に対応させ、機体を操縦します。この時に、左右スティックの縦横方向あわせて4通りの操作を、機体におけるエルロン・エレベーター・ラダー・スロットル操作のどれに対応させるかの違いが、プロポにおけるモードの違いとなっています。
プロポにはモード1からモード4までの4種類の操作モードが存在します。次の項目から、それぞれの操作モードにおいて、左右スティックの縦横操作がどの操舵に対応しているかを説明します。
モード1による操縦の仕様・設定
モード1は、日本のラジコン飛行機界隈で最もスタンダードとされている操作モードです。
スティック操作 | 対応舵面 |
---|---|
右スティック縦操舵 | スロットル |
右スティック横操舵 | エルロン |
左スティック縦操舵 | エレベーター |
左スティック横操舵 | ラダー |
モード2による操縦の仕様・設定
モード2は、ラジコン飛行機やドローンの操縦において、日本以外のほとんどの国で最も標準的な操作モードです。
スティック操作 | 対応舵面 |
---|---|
右スティック縦操舵 | エレベーター |
右スティック横操舵 | エルロン |
左スティック縦操舵 | スロットル |
左スティック横操舵 | ラダー |
モード3による操縦の仕様・設定
モード3は、モード2の左右のスティック操作を反転した操作モードです。左利きの人用とされていますが、実際には左利きの人でもモード2を選択することがほとんどで、利用率は低いです。
スティック操作 | 対応舵面 |
---|---|
右スティック縦操舵 | スロットル |
右スティック横操舵 | ラダー |
左スティック縦操舵 | エレベーター |
左スティック横操舵 | エルロン |
モード4による操縦の仕様・設定
モード4もモード3と同様に、左利きの人用として、モード1の左右のスティック操作を反転した操作モードです。やはりモード3と同じく、利用率は低めとなっています。
スティック操作 | 対応舵面 |
---|---|
右スティック縦操舵 | エレベーター |
右スティック横操舵 | ラダー |
左スティック縦操舵 | スロットル |
左スティック横操舵 | エルロン |
実機の操縦系の仕様・設定
各モードにおける左右スティックの縦横操舵が、エルロン・エレベーター・ラダー・スロットル操作のいずれに対応するかは理解してもらえたと思います。プロポの操作モードはどれを選ぶべきか、という議論に進む前に、実機(実際の飛行機やヘリコプター)ではどのように舵面を操作しているのかも確認しておきましょう。
固定翼航空機の場合
固定翼航空機(飛行機)の操縦系の基礎部分は、「操縦桿」「ラダーペダル」「スロットルレバー」から構成されます(操縦桿とラダーペダルの代わりに操縦輪が使用される場合もあります)。それぞれの操縦装置への入力は、以下のように舵面操作へと対応付けられます。
スティック操作 | 対応舵面 |
---|---|
操縦桿縦操舵 | エレベーター |
操縦桿横操舵 | エルロン |
スロットルレバー操作 | スロットル |
ラダーペダル操舵 | ラダー |
操縦桿の操作方法は、プロポのスティック操作とほぼ同じで、縦横方向に動かすことができます。スロットルレバーは縦方向のみ、ラダーペダルは横方向のみの操作が可能です。
基本的に操縦桿は足の間、ラダーペダルは足元、スロットルレバーは左手側に設置されます(サイドスティック形式の場合、操縦桿は右手側に設置されます)。
回転翼航空機の場合
ヘリコプターのような回転翼航空機の場合は、固定翼航空機の操縦桿に相当する「サイクリックスティック」、スロットルレバーに相当する「コレクティブスティック」、そして「ラダーペダル」から構成されます。
コレクティブスティックはスロットルレバーに相当すると書きましたが、正確にはエンジン出力を調整するものではなく、ローターブレードのピッチ角を全て一斉に操作することで、ローターの生み出す揚力を調整しています。
スティック操作 | 対応舵面 |
---|---|
サイクリックスティック縦操舵 | ピッチ(エレベーター) |
サイクリックスティック横操舵 | ロール(エルロン) |
コレクティブスティック操作 | 上昇降下(スロットル) |
ラダーペダル操舵 | ヨー(ラダー) |
回転翼航空機には、基本的にはエルロン・エレベーター・ラダーといった舵面は存在しないため、上の表では操作によって操縦される姿勢角を記載しています。
サイクリックスティックは右手側、ラダーペダルは足元、コレクティブスティックは左手側に設置されるのが基本です。
プロポの操作モードにモード2を推奨する理由
ここまで、「航空機の操縦はどのように行われるのか」「プロポの操作モードとは何か」「各操作モードはどのような仕様か」「実機での操縦はどうなっているか」という点について説明してきました。プロポを購入する際に、どの操作モードのものを選ぶべきかを判断するために必要な知識は得られているはずです。
ここまでの内容を踏まえて、なぜ私がモード2のプロポを推奨するのか、その理由を説明します。
モード2が実機での操縦に一番近い
ここまでに紹介したモード2の仕様、固定翼機の仕様、回転翼機の仕様を比較すると分かるように、これらのスティック操作と舵面の対応関係は非常に似ています。つまりモード1からモード4の中では、モード2が一番実機での操縦感覚に近いということになります。
実機で採用されている操縦方法には、その操縦方法が適切であるという根拠があり、パイロットによる操縦性の評価も行われてきています。つまり実機と同じ操縦方法であることは、十分な操縦性を備えていることを意味します。
モード2は直感的に理解しやすい
モード2のさらなる特徴は、プロポでの操作が直感的に理解しやすいという点です。
モード2では、前後の移動が右スティック縦操舵に、左右の移動が右スティック橫操舵に割り当てられています。また、上昇降下が左スティック縦操舵に割り当てられています。
これは、機体を上から見下ろしたときの、2次元平面上の移動が右スティックに集約され、左スティックはによる上下方向の移動と切り離して操縦することができる、ということを意味します。これにより、移動と高度の管理を別々に行えるため、操縦時に混乱することが少なくなります。
プロポの世界標準はモード2
個人的に非常に重要な点だと考えているのは、プロポの操作モードの世界標準はモード2だということです。
ドローンの開発を先導しているのは、アメリカや中国であり日本ではありません。これらの国々でモード2が主流である以上、アメリカや中国から発売されるドローンもモード2のものが多めになり、モード1に慣れていると扱いづらくなってしまう可能性があります。
ドローンは現在発展途上の段階にあり、大きな可能性を秘めています。もしもその操縦方法に、ほとんど日本でしか通用しない「ガラパゴス仕様」のモード1を選んでしまうと、可能性を狭める方向に作用してしまう可能性があると個人的には感じています。そのような観点から、「グローバルスタンダード」であるモード2のプロポを利用することを推奨します。
ただし、日本でラジコンクラブに所属する場合やドローンスクールで講習を受講しする場合など、上級者の指導を受けて練習するときは操作モードを合わせる必要があるため、モード1も選択肢にはなるとは思います。
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ただ、K-kiが聞く限りでは、モード1・モード2のどちらでも好きな方を選べるドローンスクールも少なくないようです。
プロポの操作モードを変更するには?
今回はプロポの操作モードはモード2を推奨する、というものでしたが、既にモード1のプロポを持っている場合には、モードを変更できればいいのに…と思いますよね。
結論から言えば、プロポのモード変更は可能ですが、一部ハードウェア的な改造が必要な部分があります。その詳細について以下で紹介しています。
ソフトウェアでの設定変更
ここまでに説明した、ドローンやラジコン飛行機の操縦に使う「エルロン」「エレベーター」「ラダー」「スロットル」の4つの操作入力は、それぞれの信号が1つのチャンネルに割り当てられ、プロポを介して機体へ送信されます。このチャンネル番号と信号の対応関係を変更することでモード1とモード2を変更することができます。
もう少し具体的な例を上げて説明します。例えば以下の表は、「AETR」と呼ばれるチャンネルの設定です。Aはエルロン(Aileron)、Eはエレベーター(Elevator)、Tはスロットル(Throttle)、Rはラダー(Rudder)を意味し、チャンネル番号と舵面の対応関係を表しています。
チャンネル番号 | 対応舵面 |
---|---|
Ch. 1 | エルロン |
Ch. 2 | エレベーター |
Ch. 3 | スロットル |
Ch. 4 | ラダー |
機体上の舵面を動かすためのモーターコントローラー(またはフライトコントローラー)が、チャンネル設定として「AETR」を想定しているとします。
チャンネルに対する信号の割当を変更できるモード1のプロポを使用しているの場合、「AETR」ではなく「ATER」を設定すれば、スロットルとエレベーターが入れ替わるので、モード2と同じ設定になります。これがモード1とモード2をソフトウェア的に切り替える方法です。
なお、OpenTXというプロポ用のソフトウェアを使用して上記に相当する設定をおこなための具体的な方法を以下のページに紹介しています。OpenTXを使用すると非常に細かな設定ができるため、興味のある人は参考にしてください。
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ハードウェア上の変更点
ただし使用しているプロポによっては、ソフトウェアだけでなくハードウェアでの変更も必要になる場合があります。それは、左右のスティックが異なる場合です。
プロポのスティックには、バネがついていて手を離すと勝手に中央に戻ってきます(自動センタリング)。この機能は、機体の姿勢を操舵する部分(エルロン・エレベーター・ラダー)には搭載されていますが、スロットルは手を離した後も保持されて欲しいので、バネがついていない場合が多いです。
つまり、モード1のプロポの場合は、左スティックの縦横方向と右スティックの横方向にはバネがついていますが、右スティックの縦方向にはバネが付いていません。しかしモード2として使用するならば、右スティックの縦方向はエレベーター操舵に相当するため、バネが付いていないと操縦しにくいです。このように、ソフトウェアだけでモードを切り替えても、スティックの自動センタリングが行われないため操縦が難しくなってしまいます。
このような場合には、プロポの製造メーカーが販売している交換用のスティックを使った改造を行い、スティックの挙動を変更先のモードに合わせると、モード1のプロポをモード2として上手く使えるようになります。(右スティックを縦方向にもバネが取り付けられるものに変更する。左スティックは縦方向のバネを除去すれば良い。)
まとめ:プロポを選ぶときは操作モードに注意しよう
今回は、ドローンを双銃するために使用するプロポ(送信機)について、モード1・モード2を中心に、操作モードの違いを紹介してきました。冒頭にも書いたとおりK-kiのスタンスは「モード2を推奨する」ですが、ヒューマンマシンインターフェースの話であり個人の好みも影響するため、好きな方を選べば良いとも思っています。
ただ、どちらかの操作モードに慣れてしまうと後から操作モードを変更するのは難しいですし、操作モードを変更するためにはプロポのハードウェア的な改造も必要になるため、最初のプロポ選びの時点でどちらの操作モードを選ぶかはしっかり判断しておくべきでしょう。
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ドローン・ラジコン飛行機向けプロポ(送信機)の選び方とおすすめ4選!
ドローン・マルチコプターやラジコン飛行機など、空ものラジコン向けの送信機(プロポ)の選び方とおすすめを紹介します。プロポ選びの際にはチャンネル数やテレメトリー機能、ミキシング機能などを考慮し、電波法の技術基準を満たした技適マーク付きのものを選ぶのが重要です。
プロポを選ぶ際に必要になる情報は、こちらのページにまとめてあります。プロポの購入を考えている方は、ぜひ参考にしてください。