こんにちはー!自作ドローンにGoProのパチもんをくくりつけて空撮をやってます、K-ki(K-ki@Ailerocket)です。
2015年頃からドローンが話題になることが増え、現在では「空の産業革命」とまで呼ばれその可能性に世界中が注目しています。ドローンの活躍する分野は数多いですが、日本で特に広く認知されているのはドローンによる撮影、いわゆる「空撮」でしょう。テレビやネット動画でも、ドローンで撮影された映像や写真を見る機会が非常に増えてきています。
今回はそんなドローン空撮について、どんなビジネスなのか、今後はどう成長すると予測されているのかなどを紹介します。また、個人でドローン空撮をしてみたい人向けに、空撮をするために必要な資格や関連するルール、飛行許可申請などについて解説します。
ドローン業界の市場予測
まずは空撮も含めたドローンビジネスについて、その全体像をつかみましょう。インプレス総合研究所が発行している「ドローンビジネス調査報告書2019」を引用し、ドローンビジネスの市場規模を見てみます。
この調査報告書は、2018年度までのデータをもとに、2024年度までの国内ドローンビジネスの市場規模を予測しています。この予測によれば、2018年度に931億円の市場規模だった国内のドローンビジネスは、2024年度には約5.4倍の5073億円まで成長するそうです。
もちろん予測は予測、必ずしもこの予測のとおりになるとは限りません。ただし、2年前の2017年版では、2016年度までのデータから2018年度の市場規模は885億円と予想していました。最新のデータによれば、2018年度の市場規模は931億円とのことなので、多少のずれはありますが大外れはしていません。従って、この予測はある程度信頼できると思います。
データを見る限り、ドローンはしばらくはかなり成長する産業になるようです。このあたりは、普段目にするニュースなどから感じ取れる肌感覚と大きなズレはないんじゃないでしょうか。
ドローンによる撮影分野は成長市場
ドローンビジネスの市場予測を把握したところで、次はドローンによる撮影・空撮分野の市場予測を見てみましょう。上と同じくドローンビジネス調査報告書2019より、ドローンによるサービスの市場を分野ごとに予測したデータを引用したものが以下になります。
グラフを見ると、空撮の市場規模が思ったほど大きくないと感じる人が多いと思います。実はドローンが活躍する分野の中でも主となるのは、建築物・インフラなどに対する「点検」分野や農薬散布などを行う「農業」分野であり、空撮はそれらに比べると市場規模が小さいです。これは、映像制作の現場において必ずしもドローンを使って撮影を行わなければならないわけではなく、あくまで演出のためのオプションという位置づけにあることも影響しているのでしょう。
とは言え、2018年度に21億円だったドローン撮影の市場規模は、2024年には91億円と4倍以上に成長すると見込まれています。ドローンが活躍する他の分野に比べて規模はあまり大きくないですが、十分な成長市場と言えるでしょう。
ドローン撮影・空撮の業務内容
ドローンを利用した撮影を行う場合、主要な作業は主に3種類あります。計画立案・ドローン撮影・編集の3つです。
計画立案
どんな撮影の現場でも、どんな映像・画像をどうやって撮影するか計画を立てる必要があります。なんとなく撮影を始めても、ほしい映像が撮れることはないだろうというのは想像がつきますよね。
ドローンを使用して撮影する場合、カメラを3次元的に動かすことが可能になるので、どんな角度からどんな画角で撮影するのか、立体的に考えて計画を建てる必要があります。また、ドローンをとばす際は場所や方法によって飛行許可申請が必要になる場合があります。撮影計画を立てた上で、その計画を実現するための飛行計画を立てる、この部分はドローン撮影の特徴と言えるでしょう。
飛行計画を立てて飛行許可申請の申請まで行う必要がある点で、ドローンを使った撮影ではより綿密な計画が求められます。また、どんなふうに撮れば魅力的な映像を作れるか考えて計画する、映像制作面の能力が問われます。
ドローン撮影
計画を立案し、場合によっては飛行許可申請まで行ったら、いよいよ撮影作業を行います。天候や風に注意しつつ、安全に撮影を行う必要があります。
このときに必要になるのは、やはりドローンの操縦技術です。操縦技術が不足していると、撮影できる映像の幅が狭まりクライアントが満足する動画・画像を撮れない可能性があります。近年のドローンは自動操縦技術が発達しておりただ飛ばすだけなら簡単ですが、手動で自由自在に操れなければ、魅力的な映像を安全に撮ることは難しいでしょう。
編集
撮影した動画・画像を編集し、映像作品等の形にしてクライアントに納品します。編集ソフトを使いこなし、魅力的な映像に仕上げる編集技術が求められます。
ドローンによる撮影事業の例
ドローンによる撮影事業は、既に全国各地で展開されています。
ドローンで撮影してくれる業者を探している人は、こういった事業を展開している企業に依頼すると良いでしょう。また、ドローン撮影を行うパイロットになりたい人は、こういった企業の求人を探すのも一つの方法です。
あるいは、個人で活動しているドローンパイロットに仕事を依頼できるようなサービスもいくつか存在しています。「SORAeMON」もそういったサービスの一つです。
こちらのサイトでは、ドローンパイロットが制作した動画を見た上で、仕事を依頼することも可能です。
この他にも、副業として取り組みやすいストックフォトサービスで写真を売るなど、ドローンによる空撮事業を収益化する方法はいくつかあります。以下の記事でサービスの例などを紹介しているので、併せて読んでみてください。
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空撮だけじゃない!ドローンの副業・ビジネスで稼ぐ方法まとめ
ドローンをビジネスや副業に活用する方法を考えます。点検、農業、測量、空撮などドローンビジネスの分野ごとにビジネスを展開する際のポイントや成長の背景を分析しています。また、収益化に繋げるためのプラットフォームも紹介します。
ドローンでの撮影に使用する機材
ドローン撮影にはどんな機材を使用するのでしょうか。空撮機というと、どうしてもDJIのPhantomシリーズのイメージが強いですが、もちろんほかにも様々な選択肢があります。ドローン空撮に使用されるドローンや関連する機材を紹介します。
機体
空撮ドローンの筆頭は、DJIのPhantomシリーズです。ドローンというだけでこの機体をイメージする人も少なくないでしょう。機体に始めからカメラが搭載されており、4K画質で60fpsの撮影を行うことが可能です。
一方で、より大型のMATRICEのような機体も空撮ではよく利用されます。この手の機体はカメラを別付けするようになっており、一眼レフやシネマカメラといったより大型・高性能のカメラを搭載して撮影することが可能です。
ジンバル
大型の機体にカメラを搭載する際には、「ジンバル」と呼ばれる振動抑制装置を介してカメラを搭載します。ドローンはローターを回転させて飛んでおり、飛行中の機体は振動しています。そのままカメラを固定すると、機体の揺れが撮影する映像等にも現れてしまうため、ジンバルを介すことで撮影機材に振動が伝わらないようにします。
カメラ
MATRICEのような大型の機体には、一眼レフ等の大型で高性能なカメラを搭載することが可能です。また、動画撮影用にシネマカメラと呼ばれる大型で画質の良いカメラを搭載することも可能です。特に映像のクオリティにこだわるプロユースでは、これらの機材を選択する場合が多いです。
ドローン撮影・空撮に必要な資格
ドローンを使って撮影・空撮をするためになにか資格は必要なのでしょうか。結論から言うと、答えは「ノー」です。空撮に資格は必要ありません。
ただし、好き勝手にどこでも撮影ができるかと言うと、そうではありません。ドローンを飛ばす空域によっては国土交通大臣の許可が、ドローンを飛ばす方法によっては国土交通大臣の承認が必要です。具体的には、以下のようなルールが航空法で定められています。
ポイント
以下の空域を飛行する場合は、国土交通大臣の許可が必要です。
- 空港等の周辺の上空の空域
- 150m以上の高さの空域
- 人口密集地区の上空
ポイント
以下の方法で飛行する場合は、国土交通大臣の承認が必要です。
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 第三者の人又は物件から30m未満の飛行
- イベント上空飛行
- 危険物輸送
- 物件投下
これらに該当する条件でドローンを飛ばす場合は、国土交通省に飛行許可申請を行う必要があります。なお、航空法施行規則で職権の委任が規定されており、実際の許可・承認は地方航空局長が行います。
飛行許可申請のやり方
国土交通省に飛行許可申請を行う場合、国土交通省が運用している「ドローン情報基盤システム」から申請を行う必要があります。また、大まかな流れは以下のとおりです。
飛行許可申請の流れ
- 機体(無人航空機)情報の登録
- 操縦者情報の登録
- 申請書作成
- 申請書提出
- 申請書審査
- 許可書発行
作業は膨大ですが、極端に難しいわけではないため、ドローン情報基盤システムにアクセスして案内通りに操作していけばよいでしょう。
システムは常時稼働状態のため、365日24時間いつでも申請書を提出することが可能です。ただし、提出した申請書に対する審査は平日にしか行われません。余裕を持って飛行予定日の1ヶ月くらい前には申請書を提出することが推奨されています。
ドローン撮影・空撮で持っていると役立つ資格
ドローンを使用した撮影に必須の資格はありません。しかし、持っていると役に立つ資格はいくつか存在しています。ここでは、そういった「プラスアルファ」の効果がある資格を紹介します。
ドローン操縦の民間資格
上にも書いたとおり、ドローンを飛ばす場所や飛ばす方法によっては、国土交通省への飛行許可申請が必要です。このときに役立つのがドローン操縦に関する資格で、国土交通省の公認を得ている資格であれば飛行許可申請の書類を一部省略することも可能です。資格の種類については、以下のページで詳しく説明しています。
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ドローンの資格にはどんな種類がある?JUIDA・DPA・DJI等を解説
ドローンの操縦に関連する資格について、認定団体や法的背景も交えて分かりやすく解説しています。種類が非常に多いドローンの資格の中から、実用性の高いものを抽出し、取得方法、費用、有効期限、受講資格などを紹介します。
なお、資格を取得する際には、ドローン操縦の実技練習が行われる場合も多いため、飛行許可申請の簡略化に限らずドローン操縦の資格を持っていることにはメリットがあります。
第三種陸上特殊無線技士
空撮分野では該当することは少ないと思いますが、大型で長距離移動が可能なドローンを使用する場合、第三種陸上無線技術士の資格が必要になることがあります。これは、電波法の規制に基づくものです。
ドローンの操縦は、操縦者が手に持つプロポ(コントローラ)から無線で制御コマンドを送ることで行います。このとき電波を使用するため電波法が適用されます。一般的なドローンであれば、Wi-Fiと同じ周波数帯の電波を使うため特別な資格は必要ありませんが、大型の機体では遠くまで届く5.7GHz帯の電波を使う場合があり、この周波数帯の電波を扱うためには第三種陸上無線技術士の資格が必要になります。
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【電波法編】ドローン関連の法律解説!技適マークと周波数に要注意!
ドローンを規制する法律は数が多く内容も様々なためわかりにくいです。そこでドローン関連の法律から電波法を取り上げ、その規制内容や違反事例を紹介します。ドローンパイロットに限らずエンジニア・開発者も理解が必要な法律です。
電波法についてはこちらのページで詳しく紹介しているので、第三級陸上特殊無線技士に興味がある方は読んでみてください。
ドローン撮影・空撮に必要な技術・知識
ドローンを使用した撮影を行うためには、どのような技術や知識が必要になるのでしょうか。代表的なものを紹介しておきましょう。
映像制作能力
最も重要なのは、ドローンを活用してどう魅力的な映像を作るのか、という映像制作能力です。ドローンはあくまで手段であり、クオリティの高い映像を作るためにはドローンにこだわる必要はありません。どんな構図で、どんな画角で対象を見せるのか、映像としてどんなストーリーをもたせるのかといった点は、ドローンには関係なく映像制作の経験を積むことで養われます。
ドローン空撮を始める人には、ドローンから入って空撮の道に進む人が多いですが、映像を作る能力を磨かなければクライアントが満足する成果を上げることは難しいです。
法令を正しく理解し飛行許認可を取得できること
ドローンを運用するためには、法律上は資格の規定はないとは言え、やはり技術と知識が必要です。特に、飛ばしてはいけない場所でドローンを飛ばすと最悪の場合は刑事事件になるため、法律・ルールを正しく理解してドローンを運用する必要があります。
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ドローンの飛行に免許・資格は必要?操縦に関するルール・法律を解説
ドローンを飛ばすための資格・免許の必要性や関連する法律を紹介します。また、ドローンを飛ばすために許可・承認が必要になる事例を解説します。ビジネスでよく利用されるドローン操縦の民間資格についても実用性の高いものを紹介します。
ドローンの資格やルールについてはこちらにまとめているので、ドローンを飛ばす前にぜひ一読してください。
ドローン操縦関連資格はドローンスクールで取得できる
ドローン関連の資格を取得する場合、ドローンスクールという自動車教習所のドローン版のような施設で講習を受講します。資格を取ると飛行許可申請を簡略化できるだけでなく、講習の中でドローンに関する知識や操縦技術を体系だったカリキュラムのもとで学べるため、ドローンの操縦技術や知識に自信がない人にとっては、資格取得を目指すことには大きな意義があります。
主要な資格
ドローンに関する資格は種類が多く、その中からどの資格を取るべきか決めるのは意外に難しいですが、K-kiは知名度と実用性の観点から、特に以下3つの資格をおすすめしています。
ポイント
ドローン操縦の資格の中でもおすすめなのは以下の3つです。
- ドローン操縦士協会(DPA)が発行する「ドローン操縦士回転翼3級」他
- 日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が発行する「無人航空機操縦技能証明証」他
- DJI JAPANが発行する「DJIスペシャリスト」他
これらの資格は、取得するために講習を受けに行く必要があるドローンスクールの数が多く、アクセス面では全国どこに住んでいても比較的取得しやすいです。それぞれの資格に特徴があるので、以下のページを参考にこの中ならどれか1つ選ぶと良いでしょう。
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ドローンの資格はどれがおすすめ?主な資格4種類の目的別の選び方
多数あるドローンの資格から主要な4種(JUIDA、DPA、DJI JAPAN、ドローン検定)について、長所と短所を比較しながら取得すべき資格の選び方を解説します。また、資格取得のメリットやそれぞれの資格を取得するためのスクールも紹介します。
主要なドローンスクール
取得する資格の種類を選ぶのと同じくらい、どこのドローンスクールで資格を取得するかもよく考えることをおすすめします。ドローンスクールによって取れる資格も料金も資格取得後のアフターサービスも違うので、どのドローンスクールが自分にあっているのかよく調べ比較してみましょう。
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ドローン操縦スクール比較!取得資格や受講コースからおすすめを紹介
ドローンスクールで資格を取る際に湧く疑問を徹底解決します。ドローンを飛ばすための資格の必要性から始まり、資格を取得するメリット、実用性の高い資格、ドローンスクールの選び方、おすすめのドローンスクール等を解説しています。
ドローンスクール選びのポイントやそれを踏まえた上でのおすすめドローンスクールをこちらのページで紹介しています。資格を取る決意が固まったら、ぜひこちらのページを読んでドローンスクール選びの参考にしてください。
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ドローンでの空撮・撮影を学ぶのにおすすめのドローンスクールまとめ
ドローン空撮に挑戦する場合に、操縦技術や知識はどこのドローンスクールで学ぶべきか解説します。魅力的な映像を撮るためには特に操縦技術が重要で、また動画編集などの能力も必要なため、空撮に強みがあるスクールをおすすめします。
また、特にドローンによる撮影・空撮の分野に強みのあるドローンスクールをこちらのページにまとめています。現役の空撮オペレーターから直接学べるスクールや、動画編集まで学べるスクールなどを紹介しているので、空撮を視野に入れてドローンスクールでの資格取得を考えている方は、ぜひ一読してみてください。
助成金の対象になる場合もある
企業としてドローン空撮事業を展開しており、自社の社員にドローン操縦技術を習得させるためドローンスクールで資格を取らせたい場合は、厚生労働省が支給する「人材開発支援助成金」の対象になる場合があります。この制度が利用できれば、ドローンスクールの受講費のうち半額程度が助成金として支給される場合があります。
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【事業主向け】ドローンスクールで資格を取る時は人材開発支援助成金を受給すべし!
ドローンスクールで操縦資格を取得する際、要件を満たせば厚生労働省の人材開発支援助成金が支給されます。この助成金制度について解説し、申請するための条件や助成額の計算法やケーススタディ、申請の手続き方法などを紹介します。
事業として空撮を行う場合は、条件を満足するか確認してみましょう。
まとめ:ドローン空撮をしてみよう
今回はドローンを利用した撮影・空撮について、市場規模や使用機材、資格や必要な技能など、幅広い内容を紹介しました。成長市場であることは間違いありませんが、ドローンパイロットは既にかなりの数がいて、仕事も溢れんばかりに多いというわけではないため、資格さえ取ればすぐに空撮の仕事を得られる、という状況ではないことは知っておいてください。
しかし、ドローンを活用する他の分野に比べると、参入障壁が比較的低くチャレンジしてみやすい分野であることは事実です。まずはDJIのPhantomなど小型の機体を使って動画を制作し、YouTubeなどで公開してみるなど、できるところから初めて見るのもよいかと思います。YouTubeで再生数を伸ばすことができれば、仕事の依頼を受けやすくもなるでしょう。まずは一度、ドローン空撮をやってみてはどうでしょうか!