こんにちはー!ドローン自作が趣味のK-ki(K-ki@Ailerocket)です。ドローンと言えば「空撮」というイメージが先行しがちですが、実際はもっと大きなポテンシャルを秘めており、今後はより多くの分野で活躍すると予想されています。その有用性の高さから「空の産業革命」というキャッチフレーズまでつくほどです。
そんなドローンの活用分野として、国内で今後最も伸びると言われているのが「検査・点検」の分野です。今回はドローンを使った点検ビジネスについて、現状と今後の展望を解説します。また、これらのビジネスにおいて役に立つ資格や能力についても紹介します。
ドローン業界の市場予測
ドローンによるソーラーパネル等の検査・点検分野について深堀りする前に、まずは国内のドローン産業について業界の市場予測を見てみましょう。
インプレス総合研究所発行の「ドローンビジネス調査報告書2019」より、データを引用させてもらって話を進めます。この調査報告書では、2018年度までのデータから2024年度までの国内ドローンビジネスの市場規模を予測しています。この予測によると、国内のドローンビジネスは、2024年度には2018年度の約5.4倍まで成長が見込まれているそうです。
もちろん、予測はあくまで予測です。この予測のとおりにドローンビジネスが成長するとは限りません。ただ、過去の「ドローンビジネス調査報告書」の予測と、2019年版の報告書から読み取るドローンビジネスの現状を比較する限り、予測から多少の上方修正があるのみで大きな差はないようでした。従って、この予測はある程度信頼できると思います。
ドローンが急速に普及していることは多くの人の知るところだと思いますが、データから見てもドローンの普及は凄まじく、今後もしばらくはビジネスが拡大路線であると言えるでしょう。
検査・点検分野はドローンサービス市場の40%超まで成長
国内ドローンビジネスの全体的な傾向を把握したところで、次はこのページのメイントピックである「検査・点検」の分野について確認してみましょう。検査・点検分野は、先ほど引用した「ドローンビジネス調査報告書2019」のデータのうち「サービス」と分類された部分の一部に相当します。
同報告書では、サービス分野についてさらに詳細な市場規模のデータを公開しています。そのデータが以下です。
上のデータのうち、「点検」分野について見ていきましょう。2018年度時点では、市場規模は43億円、ドローンによるサービス市場のうち、約12%程度を占めています。それが2024年度には、市場規模は1473億円、サービス市場のうち40%以上を占めるようになると予想されています。成長著しいドローンビジネスの中でも、6年間で30倍を超えるずば抜けて大きな成長が見込めるのが、検査・点検分野なのです。
このような著しい成長が予測される裏には、国内の高速道路や橋梁などのインフラが老朽化していることが関係しています。日本各地の高速道路、トンネル、ダム、橋梁などの大規模なインフラは、多くが高度経済成長期に建設されたもので、既に建設後40年~60年以上の時間が経っており、今後老朽化が一斉に進んでいきます。
こういったインフラの老朽化により重大な死亡事故も発生したため、日本政府は2014年に道路交通法を改正し、トンネルや橋を5年に一度、定期的に点検するよう義務付けました。しかし、危険を伴う高所作業が多い、時間がかかるため作業に必要な費用も高額になるなど、多くの問題をはらんでいます。こういった問題を解決する手段として、ドローンを活用した検査・点検作業が大きく注目されているのです。
2020年時点では、こういった交通系インフラの点検作業は、近接目視・打音の確認によって行うこととなっています。ドローンを利用した点検を行う場合は、主に赤外線を利用して点検することになるためまだ本格的に活用されているわけではありませんが、今後赤外線等による代替手法を認める方向で関係各所の調整が行われているため、ルールの整備とともにドローンの活用は更に広がっていくと考えられています。
ドローンによる点検・検査の業務内容
ドローンによる点検・検査分野の、ビジネス的な背景を説明したところで、次はもう少し具体的に、ドローンによる検査・点検とはどんな作業を行うのか、その業務内容を確認してみましょう。
赤外線カメラを利用した点検業務
ドローンによる検査・点検業務は、基本的に赤外線カメラを利用して行います。その原理を簡単に紹介しておきましょう。
建築物の表面にコンクリートの「浮き」など欠陥があると、浮いた部分の下には空気の層ができています。空気は断熱性が高いため、浮いている部分は周りの健全な部分と比べると温度が変化しにくくなります。晴れた日など熱を受けて建築物の温度が上昇するような状況では、欠陥のある部分は空気層に遮られて熱が放出されにくく、健全な部分よりも温度が高くなります。
こうした構造的な欠陥に起因する温度差を赤外線カメラを使いサーモグラフィーとして可視化することで、欠陥のある場所を見つけ出すことができるのです。
可視光カメラによる点検業務
赤外線による検査とあわせて、通常のカメラ(可視光カメラ)による撮影も検査・点検の現場では活用されています。ドローンは空を飛んで移動できるため、人間が直接見に行くのが難しい場所の写真を撮影することで、目視点検の補助の役目を果たすことが可能です。
ドローンによる点検・検査の対象
ドローンによる検査・点検の対象として代表的なものを紹介しておきます。
ソーラーパネル(太陽光パネル)の点検
ソーラーパネルによる発電システムは、国からの補助金等の支援策もあり、1990年代の前半頃から急速に普及しました。現在では、住宅の屋根に設置されたソーラーパネルや、大量のソーラーパネルが敷き詰められた「メガソーラー」などの光景を見ることも珍しくなくなりました。こういったソーラーパネルは長いものだと既に設置から20年以上経過しており、経年劣化が進行しています。
ソーラーパネルに汚れや破損があると「ホットスポット」と呼ばれる異常発熱現象を引き起こします。ホットスポットが発生すると、発電効率が下がり、最悪の場合はパネルの故障にも繋がるため、太陽光発電では点検が非常に重要です。
従来はハンディ赤外線カメラを使用して人間が太陽光パネルを一つずつ点検していましたが、ドローンの普及によりソーラパネルを短時間・高効率で点検できるようになることが期待されています。
送電線の点検
送電線は高所にあるため、人間が点検する場合には足場やクレーンを用意する必要があり、コストや時間がかかっていました。ドローンは空中を自在に移動できるため、ドローンにカメラを搭載して写真を撮影し、送電線の点検を行う手法が注目されています。ドローンを使えば、高圧電流の流れる送電線に人間が近づく必要がないため、安全面でも優位性があります。
建築物の外壁調査
建築物には建築基準法第12条に基づいた定期点検の義務があり、「12条点検」と呼ばれています。この点検は基本的に打診によって行われることになっていますが、全ての場所を打診するとなると足場やゴンドラ、ロープを使う従来の手法ではコストが膨大になるという問題がありました。
これに代わり、コストを抑えて実施できる点検手法として注目されているのが、ドローンを使った赤外線カメラによる点検です。従来も地上から赤外線を照射して点検する手法は存在しましたが、点検の精度に難がありあまり活用されていませんでした。しかしドローンの登場により、どんな高さでも水平に撮影することが可能になって精度が向上したため、実用性が増し赤外線による点検が普及してきています。
これらの調査を管轄する国土交通省も、既に打診に代わる方法として赤外線カメラによる調査結果をエビデンスとして認めるとしているため、今後さらに普及が進むと考えられます。
高速道路・トンネルなどの公共インフラの検査
上でも触れましたが、2014年の道路交通法改正により、トンネルや橋には5年に一度の定期的な点検が義務付けられています。これらの点検作業は、近接目視・打音の確認によって行うこととなっているため、2020年初頭時点ではドローンはあくまで補助的な役割しか果たしていません。
しかし、今後インフラの老朽化が一斉に進むことになるため、点検に必要なコストや人が必ず不足してきます。それを解決する手段として、現在ドローンを利用した点検を認める方向で関係各所が調整中です。この方向に舵を切ることが決まれば、大量の仕事が発生すると考えられています。
外壁調査やソーラーパネル点検を専門業者に依頼する
こちらの動画で紹介されているように、外壁調査やソーラパネル点検の分野では、既にドローンを使ってこれらの作業を請け負う業者が存在しています。2020年初頭時点では、検査・点検に絞った企業よりも、ドローンを使って空撮、点検、測量など多種の仕事を請け負っている会社が多い印象です。
上の動画はスカイエステートという会社の外壁調査の様子を紹介したものです。こちらの会社は以下のページで外壁調査を受け付けています。
先ほど紹介したとおり、現在はドローンに関連するビジネスを幅広く展開している会社が多く、スカイエステートの場合は空撮や測量、そしてドローンの操縦技能を認定するドローンスクール事業も展開しています。この会社は新宿歌舞伎町上空の空撮なども行っており、実績が豊富といえます。
ドローンによる点検・検査に必要な資格
ドローンによる点検・検査業務に対し、現状では何らかの資格を持っている必要がある、という内容の法的な規定はありません。ただし、今後法改正等によってルールが変わる可能性はあるため、ドローンを使った検査・点検ビジネスを行う場合は、関連法規を常にウォッチし続ける必要があります。
ドローンによる点検・検査で持っていると役立つ資格
ドローンによる点検・検査業務に必須の資格はありませんが、役に立つ資格はいくつかあります。
赤外線建物診断技能師
赤外線建物診断技能師は、赤外線サーモグラフィーを利用して建物を診断し、改修箇所や改修方法等についてアドバイスする能力があることを認定する資格です。この資格を持っていると、ドローンを活用した外壁調査を行う場合に、専門的な知識と技術を用いて、顧客に適切なアドバイスを行うことができるようになります。
第三種陸上特殊無線技士
大型の産業用ドローンの中には、操縦のために5.7GHz帯の電波を使用する機体があります。5.7GHz帯の周波数の電波を扱うためには、電波法により「第三種陸上特殊無線技士」の資格を取得している必要があります。特に、大規模なインフラの点検時は長距離飛行が可能な大型の機体を利用したほうが効率が良いと考えられるため、所持していることで仕事の幅が広がるメリットがあります。
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【電波法編】ドローン関連の法律解説!技適マークと周波数に要注意!
ドローンを規制する法律は数が多く内容も様々なためわかりにくいです。そこでドローン関連の法律から電波法を取り上げ、その規制内容や違反事例を紹介します。ドローンパイロットに限らずエンジニア・開発者も理解が必要な法律です。
第三級陸上特殊無線技士に興味がある方は、関連する法律である電波法について紹介しているこちらのページも併せて確認してください。
ドローン操縦の民間資格
検査・点検業務をドローンで行う場合、ドローンの操縦技量も重要です。特に、町中の建物の点検などは、一つ間違えば人間に被害を与える事故に繋がりうるため、ドローンの操縦技術を示さないと仕事を受注することは難しいでしょう。
ドローンには、操縦技術を認定する民間資格が多数あります。この中でも、知名度・実用性が高い資格をもっていれば、操縦技術について顧客の信頼を得やすくなるため、仕事を受注できる可能性が増すと考えられます。
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ドローンの資格にはどんな種類がある?JUIDA・DPA・DJI等を解説
ドローンの操縦に関連する資格について、認定団体や法的背景も交えて分かりやすく解説しています。種類が非常に多いドローンの資格の中から、実用性の高いものを抽出し、取得方法、費用、有効期限、受講資格などを紹介します。
ドローンの操縦技術を認定する資格については、こちらのページが詳しいです。参考にしてください。
ドローンによる点検・検査に必要な知識
ドローンを利用した検査・点検分野は、今後需要がかなり増えると予想できるため、ビジネスとして参入を検討する価値がある分野と言えるでしょう。これらの仕事を請け負う上で、必要になる知識には以下のようなものがあります。
赤外線カメラの操作
ドローンによる検査・点検は、外壁調査やソーラパネルの点検など多くの対象において、赤外線カメラを使ったサーモグラフィーを利用する手法が効果的です。従って、ドローンを飛ばしつつ赤外線カメラを上手く操作し、検査対象の欠陥・故障を見落とさずに発見する能力が求められます。
赤外線カメラで取得したデータの解析
仕事として検査や点検を行う場合は、赤外線カメラで撮影したサーモグラフィーを見て終わり、ではありません。取得したデータを解析し、点検の結果を報告書として客先に提出する必要があります。報告書を作成するためのデータ解析能力や、データから問題点を見つけ出す分析能力が必要です。
法令を正しく理解し飛行許認可を取得できること
ドローンを用いた検査を行う場合に、検査対象が町中にある場合も少なくありません。航空法では重量200g以上の無人航空機に対し、人口集中地区の上空で飛行する場合には国土交通大臣の許可が必要と定めています。点検に使用するようなドローンが200g未満であるとは考えにくいため、法令を理解し飛行許可を取得できる能力も必要です。
さらに、ドローンの飛行を規制する法律は航空法だけではありません。道路交通法や民法、河川法などが適用される場合もあります。法令を正しく理解し、関連各所と調整してトラブルなく飛行するための準備ができることも重要な能力です。
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ドローンの飛行に免許・資格は必要?操縦に関するルール・法律を解説
ドローンを飛ばすための資格・免許の必要性や関連する法律を紹介します。また、ドローンを飛ばすために許可・承認が必要になる事例を解説します。ビジネスでよく利用されるドローン操縦の民間資格についても実用性の高いものを紹介します。
ドローンの飛行に関連してくる法律やルールを、こちらのページにまとめています。興味がある方は読んでみてください。
ドローン操縦関連資格はドローンスクールで取得できる
ドローンを利用した検査・点検において役立つ資格のうち、ドローンの操縦技能を認定する資格はドローンスクールで講習を受講することで取得可能です。特に、外壁調査を行っている会社が今後ドローンを活用して業務の幅を広げたい場合には、ドローンスクールで操縦技能を身につけるのが安全かつ効率の良い方法です。
主要な資格
ドローン関連の資格の種類が多いことは既に説明しました。その中でも、知名度・実用性が高い資格として、以下の3つをおすすめします。
ポイント
ドローン操縦の資格の中でもおすすめなのは以下の3つです。
- ドローン操縦士協会(DPA)が発行する「ドローン操縦士回転翼3級」他
- 日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が発行する「無人航空機操縦技能証明証」他
- DJI JAPANが発行する「DJIスペシャリスト」他
ドローン操縦の資格取得を検討している場合は、この中から選ぶのが無難です。ここからさらに絞り込む際は、それぞれの資格を比較している以下のページを参考にしてください。
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ドローンの資格はどれがおすすめ?主な資格4種類の目的別の選び方
多数あるドローンの資格から主要な4種(JUIDA、DPA、DJI JAPAN、ドローン検定)について、長所と短所を比較しながら取得すべき資格の選び方を解説します。また、資格取得のメリットやそれぞれの資格を取得するためのスクールも紹介します。
主要なドローンスクール
取得する資格と同様に、どのドローンスクールで講習を受講するかも重要です。ドローンスクールによって取れる資格が違うのはもちろん、同じ資格を取得できるスクールでも講習のカリキュラムや受講料に差があることも珍しくないからです。ドローンスクールは、よく比較して選ぶことをおすすめします。
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ドローン操縦スクール比較!取得資格や受講コースからおすすめを紹介
ドローンスクールで資格を取る際に湧く疑問を徹底解決します。ドローンを飛ばすための資格の必要性から始まり、資格を取得するメリット、実用性の高い資格、ドローンスクールの選び方、おすすめのドローンスクール等を解説しています。
そうは言っても、2019年9月時点でドローンスクールは全国に600校以上あるため、どれか一つを選ぶのは大変な作業です。こちらのページでは、ドローンスクール選びのポイントを紹介しつつ、おすすめのドローンスクールを紹介しているため、資格取得のためにドローンスクールに申し込む前にぜひ一読してください。
助成金の対象になる場合もある
自社の社員にドローンの操縦資格を取得させたい場合は、厚生労働省が支給する「人材開発支援助成金」の対象になることがあります。この制度を活用すれば、金銭的な負担を抑えつつ従業員にドローンに関する技能・知識を身につけさせることができ、ビジネスの拡大につなげることが可能です。
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【事業主向け】ドローンスクールで資格を取る時は人材開発支援助成金を受給すべし!
ドローンスクールで操縦資格を取得する際、要件を満たせば厚生労働省の人材開発支援助成金が支給されます。この助成金制度について解説し、申請するための条件や助成額の計算法やケーススタディ、申請の手続き方法などを紹介します。
人材開発支援助成金の制度については、こちらのページで詳しく解説しています。具体的にいくらの助成金を受け取れるかを計算したケーススタディも紹介しているので、助成金の申請を検討している方はぜひ参考にしてください。